2010年3月4日木曜日

Recount(リカウント)

決して盛り上がる作品ではないが

 2008年のアメリカ製テレビ映画で、主演はケヴィン・スペイシー。2000年のアメリカ大統領選挙を舞台に、フロリダ州におけるミクロの攻防を描いた作品です。なお、ELO関連となっているのは間違いではありません。

 ストーリーです。時は2000年。米大統領選挙の投票直後から話は始まります。ロン(スペイシー)はアル・ゴア副大統領の選挙対策チームの一員ですが、過去の選挙戦後に重用されなかった経歴があり、民主党候補に対して屈折した思いを持っています。しかし、一旦敗北宣言を出そうとしたゴア候補が、フロリダ州の去就が僅少差で決まっていることで敗北を認めず、民主党チームはフロリダにおける投票を正確に数えろという訴えを起こします。これにより、ロンも否応なく共和党との闘いに足を踏み入れていきます・・・

  ひょっとしたら若い方はご存知ないかも知れないので、この選挙について簡単に。2000年の米大統領選挙は民主党のゴア副大統領と共和党のブッシュテキサス州知事の間で戦われました。大都市を抑えたゴアに対し、その他の数多い州を確保していったブッシュは極めて接戦となり、最後まで去就のわからなかった数州、特に選挙人の数が多いフロリダがキャスティングボードを握ることになります。しかし、一旦はブッシュが抑えたと報じられたフロリダはその後未確定に戻り、実に数千票差という僅差で共和党の手に落ちるのですが、バタフライ式という有権者に間違いを起こしやすい投票用紙が使われていたことなどから再開票、再投票を民主党が要望することになります。さらにこの州はブッシュ候補の弟が知事を務めていたのでその意向も入り、大もめにもめた末にブッシュに軍配が上がるという結末でした。
  他国の選挙とは言え、米大統領選挙、しかも接戦となると興味が湧くわけで、当時はこのフロリダ州の行方がどうなるか、私自身関心を抱きました。しかし、日本で報道される情報には限りがあるし、かといって海外メディアの情報は玉石混淆なのとニュアンスが伝わりづらいのとで、いったい何が起こっているのか把握できないままにブッシュ大統領に落ち着いたような印象もあります。どちらかといえば、アメリカのピザチェーンがコマーシャルにて「2000年はフロリダをとったのがどっちの党だったか話題になったけど、何年も経ったらみんな忘れてるよ。それより、2000年はうちのニューモデルのピザが発売された年として記憶されるだろう」とやっていたのを覚えているくらいです(さすがにピザのニューモデルは忘れ去られるでしょうが)。
  この映画では、結果的には敗れたゴア陣営に視点を置き、開票後のごたごたがどんなふうに推移していったかを描いていきます。なんでも極僅差になった時には機械開票ではなくて手作業でやらなければならないという規則があるそうなのですが、一方で結果を判明させるための期限があり、さらにハリス州務長官が一貫しない態度をとったものだから、民主共和両党とも自分たちに都合のいいことを主張(他州の法律は参考にならないけれど、それがブッシュ知事が賛同したテキサス州の州法ならどうか、とか)し、訴訟は連邦最高裁まで持ち込まれ、しかもそれが数週間でのできごとというのは大したものです。
  実話である上にバイオレンスもロマンスも出てこないし、盛り上がりに欠けるのは明らかなのですが、それを上回る知的興奮があります。そして、この映画はテレビ映画であるにも関わらず、imdbで7.6ポイントをスコアしています。評価は☆☆☆☆です。

  なお、この映画のエンドロールではTom PettyのI Won't Back Downがほぼフルレングスでかかります。この曲がブッシュの選挙キャンペーンで使われたとかいうのは(悪名高い)Last DJのライナーに書かれていたかと思いますが、それをあえて民主党主役の映画に持ってきたのがいかしてます。

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